低所得者が多く住む地域の水事情はいかに?

 私の任地ナロックは、Narok countyの行政の中心でありそこそこ大きい街であります。すでに市街地の人口は6万人を超えているようです。そこに住んでいる人も様々で、富裕層が多く住んでいる地域もあれば、その逆の低所得者が多く住む地域もあります。

 私の配属先は水道水を浄水し、家庭などへ供給している水道会社(ケニアではほぼ民営化済み)であり、低所得者の多い地域にも水道水を供給しています。このような地域では、ウォーターキオスク(水を販売する簡易的な建物)が設置されているなど聞いていましたが、一度は実際に行ってみたいと思っていました。安易に金持ちと認識されやすい私などの外国人は、安全上の理由で夜間は立ち入らない方がいいのですが、昼間は比較的危険は少ないということなので、地域事情にも詳しい配属先のスタッフにお願いし、低所得者が多く住む、Majengoと呼ばれる地域を案内してもらいました。

Majengoに入る前に、まず始めに行った所は、マーケットがある建物の前に設置されている水道の蛇口です。ジェリー缶(水を入れるためのプラスチック製の容器)に水を汲み、三輪の車で、周辺の水道が接続されていない住民へ水を供給しているようです。ちなみに、このマーケットは、野菜類が豊富かつ安く買える店が集まっているので、私も時々買い出しに行く所です(^ ^)

マーケット前の蛇口と置かれているジェリー缶

 次に訪れたのは、公衆トイレ。周辺は商店街となっており、そこに配属先が公衆トイレを設置しています。ちなみに私の配属先は、トイレの汲み取りや下水の処理も行っています。

公衆トイレの入口
中に入ったときは掃除中でした

 その後は、Majengoのウォーターキオスクに行き、いろいろと説明してもらいました。ウォーターキオスクを管理するオペレーターがいるが、水を買う人は、オペレーターに料金を支払う。20リットルのジェリー缶あたり、5ケニアシリング(約5円)となっている。いろいろな利用者からお金を受け取ったオペレーターは、水道会社(ここでは私の配属先)に使用分をまとめて支払う。そういったしくみで、水道が接続していない家庭にも必要な水が届けられるしくみになっています。

キオスクの中で水道栓とメーターが設置されている。オペレーターはメーターに示された水量分の使用料を支払う。
ウォーターキオスクに水を汲みに来た利用者。たくさんのジェリー缶を搭載。

 さらに進み、住民の住居の様子も見てきました。この地域の住居は、塀に囲まれた敷地の中に数世帯が集まって住んでいることが多いです。トイレや水道はその中に共同用が1箇所のみ設置されているというパターンです。数世帯が集まることで、セキュリティ関係や水道料金などにかかる費用を分割して支払うことで、負担を抑えているというわけです。ただ、敷地内で唯一使用できる水道も使用時間が限られる、水量が少ないなどの不便があることが多いようです。訪れたときに話しをした住民は、蛇口から出る水量が少ないと不満を言っていました・・・

 このMajengoのような地域に住む低所得者層は、日雇い労働で収入を得ていることが多いようです。なので、明日の収入があるかわからないような生活をしているのでしょう。

塀の中にトタンで造られた住居が数世帯。
2箇所目のウォーターキオスク

 このMajengoと呼ばれている地域の様子ですが、道端にゴミが散乱している光景が広がっているのが目につきます。

 

 そのまま歩いていると豚を見かけました。街では牛、山羊、鶏あたりはいくらでも見かけるのですが、豚を見かけるのはかなりレアです。肉を買いに店に行っても豚肉はなかなかありません。最初はムスリムが多いので、宗教上の理由で売られていないのかと思ってました。しかし、ケニアの人口比率におけるムスリムは2割未満で、それ以外の人は豚が食べられないという制限があるわけではないので、謎でした。周囲の人に理由を聞いてみたところ、「元々食べる習慣がないから」、「好きじゃないから」、「汚いから」といった回答でした。豚に対しては、あまりいい印象じゃないようですね。

 Majengoを歩いていると、下水が流れている側溝を見かけます。むき出しの状態になっているので、うっかりしていると落ちてしまわないか心配です・・・最近になって、下水道が整備されており、今は、このむき出しの下水は下水道に入り、下水処理場に送られているようです。

 さらに進むと、今回案内してくれた配属先のスタッフの家が近くにあるので、彼の家に連れて行ってもらいました。Majengoによくあるような、数世帯集まっている敷地に入りました。トタンで造られた家のうちのどれかかなと思っていたら、敷地の真ん中に一軒だけコンクリートで建てられている家に入っていきました。中に入ると、きれいなソファー、テーブル、テレビ、ワイングラスが並べてあるリビングがあり、そこでくつろいでいる女性がいました。周りの家との格差がかなり大きく、彼の正体はここの大家であることが判明。低所得者が住む地域でのこのきれいな部屋は、正直驚きました!

 この後は、紅茶をいただき、帰りは途中まで送ってもらいました。

周りのトタンの家と、屋根に水タンクがあるスタッフの家
案内してもらった配属先のスタッフとその奥さん

 

 今回歩いたMajengo、古い建物が立て替えられるなど、この地域の風景は変わってきていると言ってました。

 普段、足を踏み入れることのない地域を案内してくれました。ありがとうございました!

 

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KandaKo

ケニアのナロックへ2019年7月から2020年3月まで派遣。一時帰国して2021年10月より再赴任。職種は水質検査。 趣味は旅行、登山、モータースポーツなど。