ケニアとコロナとアジア人

どうもです。まっつんです。東海地方も梅雨明けしましたね~、ジリジリギラギラと照りつける日差しに負けないよう、今日もエア縄跳び頑張ります!
さて、今日は世界的に猛威を振るっているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)について、緊急帰国前に私が感じたありのままのケニアをお伝えしようと思います。

「アフリカは大丈夫!」にビックリ!

2020年1月、ケニア国内で新型コロナウイルス感染症に関する報道を目にするようになった頃は、すでに中国で多くの感染者が出ているという状況でした。確か中国以外でも確認されているというような話も出ていたと思います。そして1月16日には日本国内で初めて感染が確認されたという情報が入りました。1月下旬にはケニアの日本大使館やJICA事務所から「中国で新型感染症が流行っていてすごい勢いで感染が広がっているので、今後の報道に注意し、情報収集に努めるように」という連絡が入りました。この時点でケニア国内ではまだ感染者は確認されていませんでしたが、すぐにアジア大陸を越えて多くの症例が確認されるようになったので、これは大変なことになりそうだなと思ったのを覚えています。

この1月というのは、ケニアの新年度がスタートする月でもあります。私が活動していた中等学校(日本で言う高校)でも、ピカピカの新入生が新たに始まる学校生活に心躍らせていました。つまり一言で言えば、けっこう忙しい時期なわけです。誰がどの授業を受け持つのか、時間割はどうなるのか、教員の役割分担はどうするのか等々。慌ただしくも楽しい時期でしたが、そんなタイミングでやってきた新型コロナ。当時ケニアでは感染者が出ていないものの、世界的な感染拡大はやはり重大事件、職員室では同僚のケニア人教師たちが毎日のように新型コロナについて熱い議論を繰り広げていました。と言っても、ネットで拾った情報をいかに誰よりも早く話せるか、という熱い戦いですが。

ある時、私は彼らに「近いうちにアフリカにも感染が拡大するから気をつけないとね。感染予防についてはどう思うの?」と投げかけてみました。すると一人のケニア人教師が真面目な顔で答えました。

“Yoshi、お前はアジア人だから気をつけないといけないが、どうやらこのコロナってやつはアフリカ人には感染しないらしいんだ。すげーだろ!”

いやいやいやいやいや…
なぜそうなる。どうしたらそうなる。本気で言ってんのか!と問い詰めましたが、何を言っても無駄でした。そういう結論にたどり着くのがすごい(笑)
人懐っこくのんびりした人が多いケニアですが、そうした国民性が少なからず影響しているのでしょうか。この時点ではまだ他人事のように考えているように感じました。(もちろん首都ナイロビではこんなことはないと思いますが)

広がるアジア人差別にビックリ!

ケニアではそれまでも中国人を始めとしたアジア人に対して差別的な感情を持つ人が多く、私が赴任してからも、街を歩けばどこからともなく「チンチョン!」「チンチョンチャン!」「チャイナ!」などと声をかけられていました。このチンチョンという言葉は主に中国人に対する蔑称とされていて、現在ではアジア人を馬鹿にする差別用語として広く使用されています。実際のところ、挨拶程度の軽い気持ちで声をかけているケニア人がけっこういるのですが、とにかくもう毎日どこにいても聞こえてきます。差別については本当に色々考えさせられましたが、このあたりの話はまた改めて詳しく紹介したいと思います。ちなみに、私の知り合いのケニア人に聞いてみたところ、アジア人はみんな中国人に見えるそうです。日中韓をはじめフィリピン・ベトナム・タイなど、全く見分けがつかないと言っていました。まぁ、私たちも黒人の出身がわからないのと同じですかね。

ということで、もともとアジア人に対しては風当たりが強いケニアですが、コロナの発生源が中国だと大きく報道されていたこともあって、中国人に対する偏見や差別がそれまで以上に強くなった印象を受けました。中国に対する露骨な拒否反応は想像以上で、バスやタクシーで乗車拒否をされるケースも多かったそうです。極めつけは、すれ違いざまに真横からボソッと「コロナ」と言われること。いつの間にか中国人(つまりアジア人全般)をウイルス呼ばわりするようになりました。これは正直キツかったですね。

俺たちはウイルスじゃない、同じ人間だ!こういう時こそ力を合わせてウイルスと闘わなければいけないのに、なんだかとっても悔しかったです。そしてこのような状況はアフリカ各地で見られました。

少しずつ変わっていく地元の様子

アフリカ大陸にも感染の波が押し寄せてくると、感染予防に関する情報が毎日のようにテレビ等で発信されるようになりました。開発途上国では医療体制が脆弱なので、感染拡大は致命的な結果を招いてしまいます。それを防ぐために、手洗いや人との接触を避けるよう呼びかけていました。手を使って食事をとる文化なので、手洗いに関しては割とスムーズに実行されていた印象です。水をためたタンクもよく見かけるようになりました。

(写真)至る所に水のタンクが置かれるようになった

人との接触を避ける。これは日頃から握手やハグの習慣がある人々にとっては、意識を変えるのが難しそうでした。挨拶の際に、肘を使うだとか、足先をコツンコツンと両サイド当てるだとか、いわゆる新しい生活様式の一つとしてメディアでは大きく取り上げられていました。地元の人たちはほとんどやってませんでしたが、やはり内心では気にしているのか、私と挨拶するときには距離をとって肘で挨拶してました。これはチャンスだと思い、そのたびに私はケニア人たちに「絶対にコロナに感染しないようにしようぜ!この意識はとっても大切だから、手洗いと同様に続けてね。アジア人以外にもね!笑」と言っていました。ケニア人ほぼ照れ笑い。こうやって顔合わせて話すと、ケニアの人たちってほんとチャーミングなんだよね。明るいし、笑顔も素敵だし。あーなんでチンチョンって言っちゃうかなぁ(笑)

ついにケニア国内で感染者が!

2月を乗り切り、3月に入っても感染者は出ておらず、学校では普段通り授業が続けられていました。そして1学期末のテストが始まって数日経った3月13日、ついにケニア国内での感染者確認の一報が出されました。こうなったら感染は確実に広がっていくと思われたので、これまで以上に感染予防に努めてほしいという思いから、手洗いうがい・咳エチケットに関する情報をプリントアウトして全ての教室に貼ることをカウンターパートに提案しました。すぐに副校長に許可をとり、生徒たちに協力してもらいながらその日のうちに貼りました。

(写真)厚生労働省が公開している英語版の感染予防啓発資料

突然の学校閉鎖と無念の帰国

感染者数が3人となった15日、ケニア政府は国内の学校を全て休校にすると発表しました。掲示したのが金曜日だったので、結果としては1日だけの掲示でしたが、多少なりとも意識付けになっていれば幸いです。しかし決断が早くてびっくりですね。

で、ここからがほんとにバタバタで大変でした。
3月18日の夜には日本への一時帰国が通達されました。そしてこの頃から国際線の運航が減ったり停止したり、入国禁止になったり、レストランがテイクアウト営業になったり、状況は刻一刻と変化していきます。私は24日に首都ナイロビへ移動し、26日に日本へ向けて出発することになりました。

任地で残された時間は6日間、カウンターパートとの打ち合わせや家の片付け、近所への挨拶など、やることは盛り沢山。ケニアに戻ることができない場合を想定して、家には必要なものが入った段ボール1箱と、処分してもよいものが入った段ボール1箱、というように後日担当者が扱いやすいようにまとめなければなりませんでした。早く終わらせておけば何か変更があっても大丈夫、なのですが、私はそんなタイプではないので、のんびり準備してました。そしたらここへきてまさかの急展開が!

それは22日の夜のこと、ケニア政府が「25日の深夜から貨物機以外の国際線の運航を停止する」と発表したのです。すぐにJICA担当者から電話が入り、ナイロビへ移動する日を23日に前倒して、さらに翌24日の便で日本へ帰ることになったとのことでした。

つまり、明日の朝イチには迎えの車がやって来るということ。

そりゃもう慌ててパッキングしましたよ。久しぶりに必死になりました。最後の一日で近所まわって挨拶できると思ってたから、この日は少ししか出かけなかったのがすげー悔しい。いや、だから余裕もって早く終わらせときゃよかったんだよなぁ。。。少ししかないけど、この日に撮った写真たちは宝物です。

無事に日本へ帰国。今に至る。

そうして、以前の投稿―日本へ一時帰国!―でお話しましたが、国際線の運航が停止される前日に無事にケニアを出国することができました。こんな超ド級のバタバタの中、ケニア隊員全員が帰国できたのもJICAの皆さまのおかげです。本当に感謝です。そして今、私は元気です。

ということで、今回は帰国前のケニアの様子や私のドタバタ劇についてまとめてみました。最後までお読みいただきありがとうございます。帰国後のケニアの様子については、また次回に。

それでは、感染が再び拡大していて大変不安定な状況ですが、皆さまくれぐれもご自愛ください。
Tutaonana Baadaye!

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MatsubaraYoshihide

愛知県名古屋市出身。高校商業科教員が現職教員特別参加制度でJICA海外協力隊に参加しています。 現在はケニア西部のマセノでPCインストラクターとして活動中。ケニアンライフをバシバシ発信していきますよ~!

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